アブダクション abduction |
起こった現象を最もうまく説明できる仮説を形成するための推論法のこと。仮説形成とも訳される。アメリカの哲学者パースがアリストテレスの論理学をもとに提唱し、帰納法、演繹法と並ぶ第三の推論法として、新たな科学的発見に不可欠なものであると主張した。日常的な例としては次のようなものがある。
(a)庭の芝生が濡れている(現象) (b)雨が降ると芝生が濡れる(法則) (c)だから(今はやんでいても)雨が降ったに違いない(仮説)
ここでは(a)の現象の原因を説明するため、最終的に(c)の仮説を立てている。しかし、芝生が濡れる原因は雨のほかにも「夜露が降りた」や「誰かが水まきをした」などいくつか考えられる。そのため、(b)の法則の内容そのものは正しいとしても、その法則を思いついて、ここに当てはめるかどうかは推論する者のひらめきにかかっている。このようにアブダクションには、想像力の発揮される余地が大きいといえる。 |
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