労使間で労働関係上の事項に関しての主張に不一致があったため紛争が生じることがあります。この紛争が原因で争議行為が発生した場合や発生のおそれが起きるような状態(労調法第6条)の場合に、外部の第三者の力をかりて両当事者の意見の違いによる紛争を調整する取り組みが必要となることがあります。
紛争、つまり争議行為が発生したときは、紛争当事者は、直ちにその旨を労働委員会または都道府県知事に届出する必要があります(労調法第9条)。労働争議の調整の基本は、あくまでも誠意を持って労使双方が自主的に解決する努力が求められます(労調法第2条、第4条)。
労働争議の調整手続きには、2つに大別されます。1つは、労使による労働協約等の合意に基づき当事者間の交渉が成立しないときに、第三者に依頼して解決をはかる自主的調整手続です。もう1つは、国が労使関係の不安定により国民経済への悪影響を防ぐため、争議調整機関として法律上設置している労働委員会による斡旋(あっせん)等を受けることで解決をはかる法定調整手続があります。労働委員会による手続きとしては、斡旋・調停・仲裁があります(労働委員会規則第64条)。この斡旋を受ける場合でも、第三者(一般的には弁護士)の力を活用したほうが費用対便益を考えますと望ましいと思われます。
斡旋は、労働争議が発生したときに、労働委員会会長が指名する斡旋員に紛争当事者(労使)に働きかけて、双方の主張を確かめ、助言をし、双方に歩み寄らせることによって紛争の解決をはかろうとするものです(労調法第10条以下第16条)。斡旋は、調整・仲裁と異なり法的には斡旋案を提示する必要はありません。実際には、多くの場合斡旋案の提示がなされています。労働者側から労働委員会に斡旋の申し出があった場合、使用者に斡旋をうけるかの意向打診があります(労働委員会規則第66条)。紛争当事者は、この斡旋に応じるか否かを自由に決められます。また、斡旋を受けて中途でやめたり、斡旋案を提示されたりしてもその斡旋案を受入れるか否かを自由に決めることが出来ます。
調停は、労働委員会に設けられる調停委員会(公益委員・労働者委員・使用者委員の三者構成)が紛争当事者の主張を聞いて法的に認められた正式な調停案を作成し、提示して解決をはかるものです(労調法第17条以下第28条)。勧告付事実調査は、紛争当事者から事情聴取等によって紛争内容の把握を行い、これに基づいて解決案を勧告するものです。(労働委員会規則第70条)いずれもその受諾を両当事者に勧告するという方法で紛争の解決をはかることになります。調停は、紛争当事者の双方から申請の場合(任意調停)、あるいは紛争当事者の双方または一方から労働協約の定めに基づいた申請、および労働委員会の職権などの場合(強制調停)によって開始されます(労調法第18条)。調停案の受け入れるか否かは紛争当事者を拘束せず自由です。
仲裁は、労働委員会に設けられる仲裁委員会が紛争当事者の主張を聞いた上で紛争当事者に対して法的拘束力(労働規約と同一の効力を有する)のある、両当事者に受け入れるか否かの自由のない仲裁裁定によって、紛争の解決をはかろうとするものです(労調法第34条)。仲裁は、紛争当事者の双方の申請または紛争当事者の双方または一方からの労働協約の定めに基づいた申請によって開始されます(労調法第30条)。仲裁委員会は調停委員会と異なり、労働委員会の公益委員または公益を代表する特別調整委員によって構成されています(労調法第31条、第31条の2)。
http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/jirei/14-Q02B2.html
(経営コンサルタント 加藤 實)2001年3月:掲載