電磁界デンジカイ健康ケンコウ影響エイキョウ疫学エキガク研究ケンキュウ(関西カンサイ電力デンリョク http://www.kepco.co.jp/emf-k/kenkyu/chosa.htm
疫学研究って何?
人間の病気の発生やその分布の統計的な関連性などを調査する方法です。
症例-対照研究
疫学研究には、症例-対照研究とコホート研究がありますが、
電磁界に関するものは、ほとんどが症例-対照研究です。
マスコミなどで電磁界の人の健康への影響が論じられていますが、これらは主
として一部の疫学研究結果をもとにしています。
症例-対照研究の進め方は?
例:スウェーデン(カロリンスカ研究所)研究
赤字は問題点
症例-対照研究の進め方
注): 表中の症例数、対照数の合計が抽出者数と一致していないのは、磁界の曝露量が確認できなかった人がいたため。
1. 調査対象の選定
1960〜1985年に送電線から300m以内に居住していた人を人口登録簿より選定
[条件] 1年以上居住した大人とすべての子供
2. 症例の抽出
スウェーデン登録所情報をもとに、症例(白血病、脳腫瘍、その他のガン患者)を抽出
3. 対照の抽出
患者1人に対し、4人の健康者を性、年齢、地域、送電線の種類などを一致させて無作為に抽出
4. 曝露量の推定
各症例(患者)、対照(患者でない人)について年平均負荷時の潮流と、送電線と居住家屋との距離から計算により推定。
家電製品からの曝露や屋外曝露は考慮していない
症例-対照研究の進め方
5. 曝露量で層別
抽出された症例、対照を推定された曝露量に基づき分類
3.0mG以上の症例はわずか7名
     ↓
症例数が少なく統計的精度が低い
6. 相対危険度の計算
患者の比率   患者の比率
(3.0mG以上)     (0〜0.9mG)
 7人    27人
─── ÷ ──── = 3.
32人   475人
<95%信頼区間:1.4〜9.3>
磁界曝露量が3mG以上の時、白血病の患者の割合が
0〜0.9mGの場合に比べて3.8倍となる。
ファイヒティング博士の見解は?(詳細版)
(Feychting)
例:スウェーデン(カロリンスカ研究所)研究
Feychting女史の論文(1995)における自身の評価・見解
Magnetic fields and cancer ( Karolinska institutet : 1995 )
 この研究の最も明らかな弱点は、症例数が少ないことである。また、研究された磁界の曝露と病気の両方が極めて稀であるため、観測された関連に対して偶然ということでも説明でき得る。
 将来の研究では、可能なその他の外的要因を考慮に入れなければならず、小児白血病との関連の説明として論じられてきた因子、例えば車の排気ガス、ウィルス感染、および殺虫剤などを考慮すべき。
コホート研究って?
ある集団を、暴露されている人々の集団(コホート)と
コホート研究
暴露されていない人々の集団に区別し、
追跡期間中、例えば20年間の死亡または疾病の発生を調査し、
暴露された人々の死亡率または疾病率を暴露されていない人々のそれと比較する。
参考:コホート(cohort)の語源
   もともと古代ローマの歩兵隊の一単位で、300〜600からなる兵隊の群の意味
   疫学では共通の因子を持った個人個人の全体という意味でこの言葉を使用
疫学研究における因果関係の判断基準は?
関連の密接性 関連の時間性
関連が強いほど因果関係がある。 曝露が発病よりも前にあったことが
曝露が多いほど疾病の発生率が高い。 証明されること。
関連の普遍性 関連の論理性
特定の集団で認められた現象が、 曝露と疾病との関連が、生物学的論理性
他の集団でも認められること。 からも説明できること。
関連の特異性
疾病があれば曝露があり、曝露があれば
予測される率でその疾病が発生すること。
資源エネルギー庁「電磁界影響に関する調査・検討報告書」において
以下のような指標が示されています。
相対危険比
●相対危険(オッズ比)
疫学調査において、関連の強さを示す一つの指標 
●95%信頼区間
疫学調査の精度を評価する目安
下限値が1を下回ると,関連性が有意でない。
不限値
信頼区間の幅が広い程、推定値の精度は低い。
電磁界に関する疫学研究結果に対する評価は?
資源エネルギー庁、電磁界影響調査検討会の報告書(H5.12)で
述べられている電磁界に関する疫学研究に対する評価
関連性の程度が弱い。 他の研究との一貫性が見られない。
(オッズ比は4以下程度) (同様の研究で結果が異なる)
対象となった症例の数が少なく 個人毎の磁界暴露量が
統計的精度が低い。 正確に把握できていない。
(95%信頼区間の幅が広い)
生物学的論理性から
大部分の文献では、交絡因子が 裏付けがされていない。
十分排除されていない。
以上の点から、現時点では、疫学研究結果を基に居住環境の磁界強度と
人の健康との関連性を明確にすることは難しいとされています。
用語集1(疫学関連)
相対危険(オッズ比)
 危険(risk)に曝露した群と、曝露しなかった群との疾病発生あるいは死亡の危険度の比。
 症例-対照研究においては、症例が曝露した割合と対照が曝露した割合との比。
           症例(患者)の曝露割合
 オッズ比 = ───────────────
           対照(患者でない人)の曝露割合
   
 
95%信頼区間
 サンプリングの取り方による誤差の範囲を評価する指標対危険(オッズ比)がこの範囲にあることを示す。
   
 
交絡因子
 疫学研究(症例・対照研究など)を行うとき、調べようとする危険因子(ここでは電磁界)以外で、疾病の出現頻度に影響を与えるもの。
<交絡因子の種類例>
分  類 内            容
宿主要因 遺伝、年齢、性、既往疾患、生理的条件、性格、精神的ストレス
環境要因 出生地・居住地(工業地域、交通量)、住居(換気・冷暖房・下水設備)
(社会経済文化的) 食生活(栄養素、嗜好、食品汚染)、嗜好品(飲酒、コーヒー、喫煙)、
  職業(労働環境)
環境要因 地理(飲料水、水質、大気汚染)、物理(騒音、振動)、
(自然) 化学(天然毒、化学薬品、農薬)
病因要因 細菌、病原体、発ガン物質
 
   
 
ワイアコード
 電線のサイズや本数、位置関係などをもとに、磁界の強さを分類する代替的な指標。ワイアコードは磁界測定に基づいて出されるものではない。
   
 
選択バイアス
 実際に観察する集団が、本来目的とする集団、母集団の正しい代表ではなく、特定の傾向、特性、方向性をもった集団であるときに起こる偏り。
   
 
プール解析、メタアナリシス
 既に行われた複数の研究の生データを集めて再度検討し、関連の有無やその程度をより合理的に推定する統計的手法。