溶接ヒューム対策 溶接ヒュームの対策には、以下のようなものがあります。
(1)溶接を自動化し、作業者をヒューム発生源から遠ざける。
(2)ヒューム発生量の少ない溶接方法や材料を選択する。
(3)溶接ヒュームを吸引、(ろ過)排気する。
(4)防じんマスクを使用する。
(5)溶接作業場全体を換気する。
粉じん障害防止規則によると、「屋内作業場では粉じんを減少させるため、全体換気またはこれと同等以上の措置を講じなければならない」と義務づけられており、同等以上の措置のひとつに局所排気装置があります。さらに、「溶接作業者は有効な呼吸用保護具を使用せねばならない」とされています。
溶接作業場の換気 溶接作業場の換気には、次のような種類があります。
(1)全体換気
屋内に新鮮な大気を定常的に流動させる換気方法で、一種の希釈換気方式です。
天井換気⇒建屋高さが低く、容量が小さい場合に有効。
建屋側面換気⇒中間滞留層のヒュームを一定の気流に乗せて吸引排出する方法で、建屋高さが高い場合にも有効。
(2)局所排気
溶接ヒュームの発生源が局部的である場合には、作業空間に拡散したヒュームを全体換気で除去するよりも発生源近傍で吸引捕集するほうが効率的です。粉じん障害防止規則の第27条第1項但し書きの規定により、以下に示す制御風速を満足する必要があります。可搬式局所換気装置は、1台あたりの単価が安く、集塵効率も高いので、換気装置としては非常に優れています。
(3)プッシュプル型換気装置
平成10年に特定粉じん作業の一部に換気装置としての設置が認められました。密閉式と開放式の2種類があり、アーク溶接作業へは、開放式が容易と考えられます。
(4)呼吸用保護具(使い捨て式と取替え式の2種類がある)
現在の法律では、屋内、坑内などにおいて溶接を行なう作業者は、稼動要件を満足する局所排気装置を設置しない限り、呼吸用保護具の着用を省略することはできません。
局所排気装置の制御風速
フードの形式 制御風速(m/s)
囲い式フード 0.7
外付け式フード 側方吸引型 1
下方吸引型 1
上方吸引型 1.2
第6次粉じん障害防止総合対策  平成15年5月29日付で厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに「第6次粉じん障害防止総合対策の推進について」が通達されました。通達の主旨は、次のようなものです。これまで5次にわたり、粉じん障害防止総合対策を推進してきましたが、その効果もあって、総合対策を開始した昭和56年当時に比べ、平成13年においては、じん肺の新規有所見者の発生数が大幅に減少してきた。しかし、依然として毎年200人(平成8年においては600人)を超える有所見者が新たに発生しているという事実も報告されている。新規有所見者の占める割合が高い業種は、金属製品製造業、機械器具製造業、アーク溶接作業、金属研まに係る作業者がいる工場などが挙げられる。そこで、そういった業種のより一層の実効性確保を図るために、「粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置」を示し、その周知徹底のため「第6次粉じん障害防止総合対策」を推進するものである 。
 「アーク溶接作業に係る対策について」の実施事項での第6次の特長としては、!作業環境の改善!局所排気装置等の適正な稼動、検査および点検の実施!呼吸保護具着用管理責任者の選任などが新たに明記されたことですが、第5次と一番大きく違う点は、局所排気、プッシュプル型換気装置、ヒューム吸引トーチなどの有効な粉じん発散防止措置が講じられた場合には、呼吸保護具の使用義務が免除される。という点だと思います。つまり、局部吸引型のヒューム回収器とヒューム吸引トーチを組合わせて使用することなどにより、防じんマスクなどを使用する義務が免除されるということなのです。
(1) 局所排気装置、プッシュプル型換気装置等の普及を通じた作業環境の改善屋内でアーク作業を行う場合、粉じん則第5条に基づく「全体換気装置による換気」と同等以上の措置として、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、ヒューム吸引トーチ等による粉じん発散防止策がある。
局所排気装置やプッシュプル型換気装置は、ヒューム吸引トーチに比べて、導入コストやメンテナンス費用が大きくなり、また、システムのレイアウト変更時の移設にも苦労することがあります。局部吸引のヒューム回収器とヒューム吸引トーチを組合せて使用すれば手間やコストが少なくてすむと思われます。
(2) 排気装置等の適正な稼動、検査及び点検の実施
イ. 局所排気装置またはプッシュプル型換気装置における検査・点検責任者の選任
「検査・点検責任者」は、昭和58年10月11日付け基発第563号「局所排気装置等の定期自主検査者等養成講習について」に定める「局所排気装置等の定期自主検査講習」を終了した者とする。
ロ. 局所排気装置またはプッシュプル型換気装置の検査及び点検の実施
「検査・点検責任者」に対し、粉じん則第17〜21条までに規定される定期自主検査及び点検並びに検査・点検の結果に基づく措置を行わせなければならない。
さらに、1月に1回以上の頻度で自主的な点検を行わせるものとする。
親企業の系列下にある事業場における対策を推進するため、親企業は可能な限り親企業の労働者に、563号通達に定める「局所排気装置等の定期自主検査インストラクタ講習」を受講させ、その者が、系列下の事業場の検査・点検責任者に必要な知識および技能を付与するよう努める。
ハ. ヒューム吸引トーチ又は全体換気装置の点検実施
ヒューム吸引トーチまたは全体換気装置についても、その日の作業を開始する前に点検し、これらの設備が所要の性能を発揮するよう措置するものとする。
上記のことから、局所排気装置およびプッシュプル型換気装置の検査および点検については、「検査・点検責任者」の受講義務など多くの規定がありますが、ヒューム吸引トーチに関しては始業前の点検および性能確認だけでよいということになります。ここでも、局部吸引のヒューム回収器とヒューム吸引トーチの組合せの方が、導入しやすいと言えます。

(3) 呼吸用保護具の着用の徹底及び適正な着用の推進
アーク溶接作業を行う場合、粉じん則第27条に基づき、有効な呼吸用保護具を労働者に使用させなければならないが、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、ヒューム吸引トーチ等の有効な粉じん発散防止措置が講じられた場合には、その呼吸用保護具の使用義務が免除される。
イ. 保護具着用管理責任者の選任
ロ. 呼吸用保護具の適正な選択、使用及び保守管理の推進
この呼吸用保護具の使用義務は免除される。