分類 | 労使協定 | 労働協約 | 就業規則 | 労働契約(雇用契約) | ||
「協約」「覚書」「協定」「議事録」「確認書」など名称の如何に関わらず、形式要件が揃っていれば「労働協約」として、認められます | ||||||
根拠 | 労働基準法、育児介護休業法、高年齢雇用安定法 | 労働組合法第3章 | 労働基準法第9章 | |||
交渉 | 労使交渉(労働者の過半数代表者との間、一般的には、過半数を占める労働組合が過半数代表者となることが多い): 事業場の労働者の過半数の代表ということだけで、労働組合である必要はありません。逆に、労働組合であっても、事業場で従業員の過半数を組合員としていなければ、締結権がありません。 |
労使交渉(使用者と労働組合との間)の書面による協定: 労働組合が締結の主体で、労働組合であれば、少数の組合員の組合であっても締結権がある。 唯一交渉団体約款:労働協約の中で、「会社はこの労働組合を会社内における唯一の交渉団体と認め、この労働組合以外のいかなる団体とも団体交渉を行わない」と規定することを「唯一交渉団体約款」または「唯一交渉団体条項」といいます。このような約款の締結は、以下の目的である:使用者側の都合(上部団体や他の労働組合との団体交渉を避けるため)と労働組合側の都合(第二組合ができないようにけん制し会社における独占的な地位を占めるため)。しかし、このような約款は、会社と団体交渉できる労働組合が事実上1つしか存在しない場合は、使用者と労働組合との間の現状を確認する程度の意味はもちますが、第二組合が存在する場合は、第二組合の団体交渉権を否定することになりますので無効であるとされています。しかも、労働組合法第7条第2号により、正当な理由があれば、使用者は団体交渉を拒むことができますが、正当な理由とされる前提の約款自体が無効となりますので、唯一交渉団体約款があっても団体交渉拒否は成立しません。 |
常時10人以上の労働者の事業場において、使用者が独自作成する職場の労働条件を定めた冊子で、使用者の恣意性を抑制する目的で労働協約の下位とされ、協約違反の事項は無効とされる。使用者にはその内容の届出(法89条)と、就業規則作成・変更の労働者の意見聴取義務と、労働者への掲示・交付・閲覧等による周知義務とがある(法106条)。就業規則とは、労働組合が存在しない企業では、労働関係の内容を定めるための唯一の準則といえます。 |
会社と労働者個人との間の契約 労働者が使用者に対して労務を提供することを約束し,これに対して使用者が賃金を支払うことを約束する契約です。 労働契約は,必ずしも書面で締結しなければならないわけではなく,双方が合意すれば,口約束だけでも有効に成立します。 |
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内容 | 労基法で定められている以下の12事項に関する免責的効力: 要届出:変形労働時間制(1週間単位、1月単位、1年単位)、休日労働、委託貯蓄金管理、見なし労働時間(事業場外、裁量労働)、 届出不要:有給休暇(計画、支払い)、例外(賃金全額払い、一斉休憩)、フレックスタイム。 免責とは: 基本的に労働基準法は労働条件の最低基準を記しています。この法律に違反した契約は無効であり、そういった契約で労働させた場合は使用者は処罰されます。ただ、予め使用者と労働者との間で、取り決めをしておけば労働基準法の例外的条件で労働させても使用者は処罰されません・・・その予めの取り決め(書面で!)を労使協定といいます。ということで、労使協定は使用者と従業員との間の合意文書ということです。(また労働基準法等法律の要求していないものでも要件をそろえていれば労使協定です。)ということで労使協定は良く良く十分に話し合って締結しましょう。(使用者には周知義務があります。) |
労働者の要求に関わるすべての問題が対象: 労働条件や労働者の待遇を規定する規範的部分(normative, 規準、標準:賃金、労働時間、休日、休暇などの労働条件、昇進、解雇などの人事の基準、安全衛生、災害補償、福利厚生)と、 団体交渉のルールなど使用者と労働組合との関係を規律した債務的部分(obligatory, 義務:ユニオン・ショップ約款(定められた一つ一つの条項)、組合活動条項、唯一交渉団体約款、争議予告条項、平和条項(労働協約の有効期間中に、その協約に定められた事項の変更を要求して、争議行為を行うことは許されない)などを労使で相互に債権債務を負う)より成る。 |
絶対的必要記載事項:就業規則に必ず記載しなければならない項目は次の3つです。就業規則の各項目は、それぞれ別規程で定めることもできます。 1.始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては、就業時転換に関する事項。 2.賃金(臨時の賃金等を除く。以下この項において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項。 3.退職に関する事項(解雇の事由を含む)。 相対的必要記載事項:次の項目は、会社のルールとして存在している場合には必ず就業規則に記載しなければなりません。 1.退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項。 2.臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項。 3.労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項。 4.安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項。 5.職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項。 6.災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項。 7.表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項。 8.以上のほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項。 公開した証の半数以上労働者の意見書(同意書ではない)を添付・届出。 |
使用者と個々の労働者との最も基本となる労働条件に関する契約で、この労働契約書を交わさないことが個別労働関係紛争の一因となる。 労働契約の禁止事項:労働者の足かせになるような条件を会社がつけることは出来ない。 |
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有効期間 | 労働協約の有効期間は、労使の話し合いによって自由に決められるものですが、期間を設定する場合には、3年を超える期間を定めることはできません(労組法15条1項)。3年を超える有効期間を定めても、その労働協約の有効期間は3年としか認められません。有効期間を定めた場合には、期間満了をもって労働協約は終了します。有効期間を設定しない場合には、このような制限はありません。労使のいずれかが労働協約を破棄したいと思えば、、「労使両当事者のどちらか一方が署名するか記名押印した文書で、少なくとも90日前に予告する」ことによって解約することができます(労組法15条3項、4項)。ただし、解約権濫用の行使に当たらないことが当然に求められますので、無制限に解約できるというものではありません。また、解約権を行使する前に、労使関係安定の見地から労使交渉による合意形成のための努力をすることが必要です。 |
3年以内の契約 | ||||
適用 | 労働基準法の要求する協定が締結されると、それは全従業員にその効力を及ぼすことになります。 たとえば、少数組合が変形労働時間制導入反対と叫んでいても、過半数組合の代表が変形労働時間制について協定化すると、少数組合もまた、自分たちの関与しないその協定に拘束されることになります。 |
原則として、自分たちの労働組合の組合員のみを拘束します(例外は一般的拘束力)。したがって、他の労働組合の締結した労働協約は、自分たちの組合員には適用されません。 個別協約と包括協約:個々に締結する場合(個別協約)と一括して全体を締結する(包括協約)がある。 労働協約の拡張適用(一般的拘束力)として、一つの工場や事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上が、一つの労働協約の適用を受けるときは、残りの非組合労働者にもその協約が適用される(労組法第17条)。ただし、その工場・事業場に個別の労働協約を締結した複数の労働組合が存在しているときには、たとえ多数派のA組合の労働協約の適用を受ける労働者の数が4分の3を超えたとしても、他の少数派組合の組合員に対してはその労働協約は適用されない判例が多い。また、著しく不合理な拡張適用は、非組合員でも適用されない場合がありうる。その場合、少数派組合との労働協約を解消して、就業規則を改定して、対処すること。 また、一つの地域の同種の労働者の大部分が一つの労働協約の適用を受けている場合には、当事者の申立て等によって、労働大臣又は知事は、労働委員会の議決を経て、その地域の他の同種の労働者及び使用者にもその協約の適用を受けることを決定できる(地域的一般拘束力)(労組法第18条)。 |
従業員全員 | 従業員各自 | ||
注意 | 労使協定の効力: 労使協定の効力は、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものです。ただし、労使協定には、就業規則や労働協約のように労働契約に勝る規範的効力(法令>労働協約>就業規則>労働契約)はないので、労使協定とあわせて就業規則・労働契約で時間外労働させることがある旨の定めが必要となってきます。したがって、労働者の民事上の義務は、その協定から直接生じるのではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要になります。(昭和63年1月1日基発第1号) |
就業規則は一度作成すると、従業員にとって不利になる内容の変更をするには合理的な理由がなければすることが出来ません。就業規則の内容は慎重に決めましょう。 就業規則の変更条件:合理性があることが重要。不利益性<必要性(例えば、単年度減収程度での賃下げの必要性は労働者の不利益性より低く合理性がないとされ、希望退職・退職勧奨・整理解雇が必要な状況での賃下げの必要性は労働者の不利益性より高く合理性があると判断される。)、就業規則の内容の相当性(特定の者を狙い撃ちしていない、移行措置などをとっている。)、代替措置(一方的に労働者に負担を強いるのでなく、他の労働条件を引き上げることで、労働者の不利益性を緩和する努力。)、数労働組合や労働者代表との交渉経緯(就業規則は会社が一方的に変更することはできますが、多数労働組合や労働者代表の合意が得られていない場合は合理性が低いとされる可能性が高くなります。少なくとも合意を得るための努力は必要です。)、少数組合など少数意見の尊重(労働者代表との話し合いだけで済ませては、後々トラブルの種にもなりかねませんし、企業の説明責任が果たされていないと見られることもあります。少数意見にも耳を傾け、誠意を尽くして説明することが重要です。)、同業他社との比較(同じ地域や同じ規模の同業他社の労働条件と比べて著しく低いものは、合理性がないと見られる可能性が高くなります。)。 |
労働契約の締結に関する規制: 労働基準法では,労働契約の締結に関して,次のような規制をしています。 @ 賠償予定(第16条) 期間の定めのある契約の場合に契約期間の途中で会社を辞めてしまった場合などの違約金や,労働者の不注意で会社に損害を与えてしまった場合などの損害賠償金の額を,あらかじめ取り決めておくことは禁止されています。これは,違約金や損害賠償の額を「あらかじめ」定めておくことを禁止するもので,労働者に対する損害賠償請求自体を禁止するものではありません。 A 前借金相殺(第17条) 労働者にお金を前貸しして,その返済に充てるためにその後の給料から貸した分を差し引くということも許されません。後々の賃金で弁済することを条件とする前借金が,労働者をその会社に拘束することを防止するためです。 B 強制貯金(第18条) 使用者は,労働契約の締結・存続の条件として,労働者に貯蓄をすることを強制することはできません。ただし,労働者から委託を受けた場合は,過半数労働組合又は過半数代表者と書面で協定を結び,これを労働基準監督署に届け出るなど,一定の要件を満たせば,労働者の貯蓄金を管理することは可能です。 C 契約期間(第14条) 期間の定めのある労働契約を結ぶ場合は,その期間は原則として3年を超えてはいけません。ただし,次に掲げる場合には,契約期間の上限は,5年になります。 ア 専門的な知識,技術又は経験を有する労働者との間の労働契約。この場合の労働者は,そのような高度の専門的知識等を有する労働者であり,その業務に就く人に限られます。また,「専門的知識等」とは,具体的には,博士の学位を持っている者,公認会計士,医師,弁護士などです。 イ 満60歳以上の労働者との間の労働契約 これ以外に,例えば,3年6か月の工期の土木工事に技師を雇い入れる場合など,一定の事業の完了に必要な期間を定める場合は,3年や5年を超えても良いとされます。 労働組合法は,使用者が労働者を雇用するときに,労働組合に加入しないことや労働組合から脱退することを条件とすることを禁止しています(同法第7条第1号)。 |
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規定が労働時間、賃金、退職に限定:実務上は、労働協約または就業規則またはその他これに準ずるものに依存。 | 締結が、組合の有る事業場に限定される。 | 締結は、組合の有無に無関係なので、実務的諸規定として最重視される。従業員が10名未満の場合が問題となる。改正届出が必要な為、内容に関して、事業者には不満が残る。 | 事業者に対して劣勢な非正規職員で問題化し易い。明文化が必要。 | |||
参照 | 1.安全衛生管理規程の作り方とそのモデル、大関親(おおぜきちかし)著、第2版、中災防、平成18年、(1470円)、規程例:(1)大中規模事業場などで、就業規則とは別の規定として;製造業、製造業以外、教育・研究事業、(2)小規模事業場で、就業規則中に安全衛生管理を規定する例、、安全衛生管理規程実例、 2.マトリックス表から組み立てる就業規則の作り方、第2版、冨塚祥子(しょうこ)著、日本法令、(2600円)、一覧表とCD−R添付、 3.電子版就業規則届(パンフレット)、 4.おおひがし労務経営事務所:就業規則モデル:http://www.shugyoukisoku.com/9-0.htm、 5.http://www2.odn.ne.jp/~aao50360/moderusyurui.htm、 |
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