うつ病の高い罹患率と低い適切な治療を受ける割合(Ronald C. Kessler et al. The Epidemiology of Major
Depressive Disorder. Results From the National Comorbidity Survey Replication
(NCS-R). JAMA 289: 3095-3105, 2003)
最近、NCS-R ( 全米併存症調査 ) による大規模な調査が行われ、大うつ病 ( MDD )予防およびその治療に関する新しい実態が明らかになりました。
今回の調査には 18 才以上の成人が 9090 人参加し、うつ病の罹患率およびその相関を測定しました。診断では以下の方法が用いられました。すなわち、WHO
( 世界保健機構 ) 統合国際診断面接法 ( CIDI )、うつ病症候学自己式簡易項目を使った 12 ヶ月重症度評価 ( QIDS-SR )、シーハン障害尺度
( SDS )、そして WHO 障害評価尺度 ( WHO-DAS ) です。
その結果、一生に一度でも大うつ病を経験したことのある人は全体の 16.2 % にのぼり、調査開始前の 1 年間に絞ってみてみると 6.6 % でした。後者の患者グループの中では、軽度のうつ病が
10.4 %、中度が 38.6 %、重度が 38.0 %、そして超重度が 12.9 % でした。症状はおよそ 16 週間続き、59 % が重度または超重度の性格障害、あるいは仕事や日常行為の不能に陥っていました。全体の
72.1 % が一生に一度、または過去 1 年間に実に 78.5 % が、なんらかの精神障害を併発していました。この過去 1 年間の患者グループでは 51.6
% が大うつ病の治療薬を服用していましたが、適正な治療を受けていたのはそのうち 41.9 % でした。全体的に見れば、最近うつと診断された患者のうち、適切な治療を受けていた者はわずか
21.7 % です。
以上の結果から、うつ病は一般的で、深刻な病気と言えます。たしかに最近は数年前に比べ、診断技術が向上し、治療の機会は格段に増えました。しかしながら私たちはうつ病治療を取り巻く現状を忘れるべきではありません。依然、一部では不適切な治療が行われており、今後改善する余地はまだ大いにあるのです。